こんにちは!外注せずにご自身で経理を行いたい方をサポートする宝塚の会計事務所、「じぶんで経理」植田会計事務所です。
前回は「年明け経理はリスクがいっぱい!」というタイトルで、消費税にかかわるリスクについてお話ししました。
消費税のリスクは非常に大きく、届出一つで税額が大きく変わってきます。
あってはならないことですが、我々税理士がやってしまうミスの多くがこの消費税関係です。
以前ある会社が消費税の課税事業者に該当するかどうか、他の税理士事務所にアドバイス差し上げたことがあります。
非常にややこしい判定で、一見すると免税事業者と判定してしまいそうでしたが、結果は課税事業者に該当しました。
ところが申告書提出後、管轄の税務署から「免税事業者に該当する」との連絡が来ます。
口頭で説明しても「課税事業者に該当するのでもう一度確認してください」との一点張り・・・。
免税事業者にならないことは分かっていたので、税務署に対し税務署が作成したパンフレットを使用して判定の経緯を説明すると、最終的には税務署にも納得していただきました。
この出来事からも分かるように、消費税の制度は税務署ですら判定を間違えるほど複雑になっています。
それほど複雑な制度を一般の方が理解して判断を続けていくことは無理があるように私は思うのです。
話が脱線しましたが、年明け経理のリスクについて、話を続けます。
税金は事業から発生するものだけではない
年明けに経理を済ませて税金が確定。
ホッとして事業主の方とお話ししていると「そういえば車を買い換えたんだけど、関係なかったよね?」と一言。
・・・私用の車なら関係ないのですが、大部分を事業の用に供している車だったので、税金の計算はやり直しになります。
買い換えで下取りに出した車は中古でも価値の下がりにくい車種なので譲渡所得が発生し、かつ、消費税もかかってきます。
そうなると、納税の資金繰りを計算し直さなければなりません。
また、生命保険の満期保険金があったり、所有する土地に広告看板が設置されて不動産収入があったりしても所得税は変わってきます。
さらに、ご本人にそのつもりはなくても名義をお子様にしたため、贈与税が発生してしまうケースも見受けられます。
個人事業主は12月までに10カ月分の経理を終わらせておくべき
ご紹介したケースは、いずれも「気付かなくても仕方ない」ケースと思います。
税金の仕組みは複雑で、個人事業主の方が日常の業務をいちいち税金と結び付けているとは考えられないからです。
だからといって、税金が免除されるわけではありませんが・・・。
それでは、個人事業主の方はどのようにすれば様々な税金リスクから身を守ることが出来るのでしょうか?
私は「とにかく10カ月分の数値を集計しておく」ことをお勧めします。
これは法人にも言えることですが、ほとんどの税金には「期間」が決められています。
所得税や贈与税なら毎年1/1〜12/31が所得や贈与額を計算する期間ですし、法人なら通常は期首から1年を経過する日(決算日)が利益を計算する期間です。
この期間を超えてしまうと新たな計算がスタートしてしまうので、何か対策を取ろうとすると、その期間内に行動する必要があります。
さて、対策を取るには今年度の利益がいくらくらいなのか把握する必要があります。
固定費が費用のほとんどを占めるようでしたら売上でほぼ利益は決まります。
しかし、変動費が多くを占める場合は実際に集計してみないと利益を把握することは困難です。
売上や費用を集計していない状態で経営者の方に「今期の利益はいかがですか?」と尋ねても、回答は経営者の性格に大きく左右されます。
楽観的な方は大体「前期と同等以上」、保守的な方は「前期より少なめ」と回答されます。
そこで、10カ月分の数値を集計しておくことが重要になります。
売上は集計しやすいと思いますので全てを、逆に費用は細かいところまでは求めません。
例えば、現金払いの細かい費用は後回しにして、振込や口座振替などの分かりやすいものを集計してしまいます。
そうして10カ月分の利益が出てきたら、残り2カ月の売上や費用を差し引きして決算予想を出すのです。
個人事業主の12月頃ならば、11月の売上と費用は出そろっているでしょうし、12月の売上と費用も大体検討がつくはずです。
法人も同様のやり方です。
これが出来るかどうかで変わるのは税額だけではありません。
資金繰りも変わってきます。
資金力の弱い小規模事業者にとって怖いのはスポットの支払いです。
中でも税金はスポットの支払いの中でも金額が大きく、影響の強いものとなります。
あらかじめ2〜3カ月後に税金の支払いがあることが分かっていれば対策の取り様もありますが、申告直前に分かっても打つ手はほとんどありません・・・。
今まで年明けに経理を行なっていた個人事業主の方や決算後に経理を行なっていた経営者の方は、一度「10カ月経理」をお試しください。
きっと、決算前にやるべきことが見つかるはずです。