「経理」カテゴリーアーカイブ

青色決算書で使用すべき勘定科目とは?

こんにちは!外注せずにご自身で経理を行いたい方をサポートする宝塚の会計事務所、「じぶんで経理」植田会計事務所です。

誰もが一度は迷う勘定科目の選択

今回は確定申告の話です。
もうすぐ2017年、平成29年分の確定申告がスタートしますが、皆さんは青色決算書の勘定科目として、何種類くらいの勘定科目を使用されていますか?

私が見る限り、最初からある勘定科目のみで処理されている方もいれば、ご自身で必要な勘定科目を作成して処理されている方など、ひとりひとり異なる方法を採用されています。

人によって方法が異なる原因は、勘定科目の選択について決まったルールが存在していないためだと考えられます。

例えば「銀行振り込み時の手数料」。
使用する勘定科目は「支払手数料」であったり、「雑費」であったり、または「仕入」や「消耗品費」など振り込む元となった勘定科目に含めてしまうなど様々です。
どれを使用しても不正解、ということはありませんが、経理を楽にしたい方には抑えておいていただきたいポイントがあります。

勘定科目の数はできるだけ少なく

経理を楽にするためのポイント。
それは「勘定科目の数を少なくする」ことです。
「な〜んだ、そんなことか」「あたりまえ」なんて思わないでください(汗)
経理に時間がかかって困る!という方の青色決算書を拝見すると、「こんなに分けなくていいのに」というくらい勘定科目が細かく設定しているケースが多いのです。

中には車関係の事業ではないのに、「車両修繕費」「車両消耗品費」「車両諸費」など、かなり細分化されている方も・・・。

では具体的にどの程度まで勘定科目の数を少なくできるのか、消費税の免税事業者を前提に考えてみましょう。

まず、収入の勘定科目は必要なので「売上高」は使用します。
「その他の収入」や「雑収入」も売上高で統一し、売上の返品や値引も売上から直接マイナスして、全て売上高で処理します。

次に売上原価関係。
棚卸がある事業なら「期首商品棚卸高」と「仕入高」、「期末商品棚卸高」は必要です。
仕入の返品や値引は仕入から直接マイナスして、全て仕入高で処理します。

経費は「租税公課」「旅費交通費」「消耗品費」「通信費」「水道光熱費」「給与手当」「地代家賃」「支払利息割引料」「減価償却費」くらいには分けておき、それ以外は全て「雑費」で処理します。
なお、人によって使用する勘定科目は分かれますが、「ガソリン代」や「車検代」は消耗品費、「携帯電話料」「切手・郵便・宅配便」は通信費、「振り込み手数料」「税理士等士業への報酬」は雑費で処理します。

さらに経費のうち「金額の合計が数千円しかない支出」は重要性が低いと考えられるため、雑費に含めて処理します。
「金額が少なく、支出回数が年に1〜2回」という支出も同様です。
そうすることで、翌年からは「この支出はわざわざ勘定科目を設定する支出ではないな」と判断できるようになります。

しかし、摘要はしっかりと

勘定科目の数は少なくする方が経理が楽になりますが、摘要はしっかりと記載するようにします。
ここでいう「しっかり」とは「詳細に」という意味ではなく、「後から見て内容が分かるように」ということです。

「消耗品費500円」では何の支出か分かりませんが、「消耗品費500円 ガソリン代」と処理しておけば領収書を見なくても内容が分かりますよね?

エクセルや会計ソフトを使って処理する場合は、あらかじめよく使用する摘要を登録しておくと、より処理が楽になります。

経理は楽に行うことが重要ですが、後から見返して内容が分からないようでは、経営分析にも税務調査にも役に立ちません。
勘定科目は少なくしつつも、二度手間にならないよう、摘要の記載は工夫しましょう。

個人事業主が申告前に注意すべきポイント~在庫の計上もれ~

在庫の計上もれにもご注意!

こんにちは!外注せずにご自身で経理を行いたい方をサポートする宝塚の会計事務所、「じぶんで経理」植田会計事務所です。

世間がクリスマスで賑わっているとき、違う理由で賑わっているのが会計事務所です。
今年の植田会計事務所も年末調整、個人事業主様や12月決算法人様の決算予想・対策その他諸々で慌ただしく過ごし、気付くとクリスマスも終了・・・。
子供へのクリスマスプレゼントがあるので何もしなかったわけではありませんが、今年はいつにも増して慌ただしかったように感じます。

さて、先日の投稿では年一回申告のみのお客様の「売上の計上もれにご注意!」という内容をお伝えしましたが、今回はもう一つの注意点「在庫による利益の増加」です。

売上-仕入+在庫=粗利益の関係

小規模企業、特に個人事業主の損益計算で多く見られるミスが「在庫の未計上」です。
なお、私の想像ですが、この在庫の未計上は「計上し忘れている」のではなく、そもそも「計上の必要性自体知らなかった」ことを原因として発生しているのではないでしょうか。

さて、細かい説明は省きますが、在庫が発生する事業では「売上-仕入+在庫=粗利益」という関係が成り立ちます。
事業開始2年目以降は「売上-仕入+(-前年在庫+当年在庫)=粗利益」となります。

たまたま年末に在庫がゼロになる可能性もありますが、卸売業や小売業で在庫がゼロというケースはほとんどありません。

つまり、在庫が発生する事業であるにもかかわらず「在庫をゼロ」として申告することは、「実際よりも利益を少なく申告しています」と宣言していることと同じなのです。

在庫となるものは商品だけではない

また、在庫となるものはいわゆる「商品」だけではありません。
製造業なら製品製造途中の「仕掛品」も同様に在庫となります。
この仕掛品には既に消費した原材料代も含める必要があります。

その原材料も未使用部分は「原材料」という在庫です。
10kg100万円の原材料が年末に5kg残っていれば、50万円を在庫として計上します。

さらに、商品や製品はそのままで売れるわけではありません。
販売するためにはラッピングや手提げ袋が必要でしょう。
製品を納品するためには運搬時の緩衝材や固定具が使われます。
こうした包材なども未使用分は在庫になるのです。

在庫の確認は目視が基本

このように説明しても「在庫の未計上なんて税務署から指摘されたことないけど?」という声が聞こえてきそうです。

しかし、それは税務調査を受けていないか、調査を受けていても何か別の理由により指摘されなかったに過ぎません。
原理原則で指摘されれば、在庫の未計上に反論の余地などないのです。

また、在庫を確認して売上原価、原価率や粗利率を把握することは事業を行う上でとても大切なことなので、税務調査とは関係なく、必ず確認してください。

そんな在庫の確認方法ですが、基本は「目視」です。
年内の在庫は帳簿上の数量、金額を差し引きする方法で把握しますが、年末は実際に目視して数えてみましょう。
おそらく、帳簿上の数量と合わないはずです。
その場合は実際の数量を使用して在庫を計上します。

税務調査がある場合は年末に行った在庫の確認記録が重要な資料となるので、どの商品や原材料がいくつ残っていたのか、必ず残すようにしておいてください。

「半分だけ」スマホ経理してみる

こんにちは!外注せずにご自身で経理を行いたい方をサポートする宝塚の会計事務所、「じぶんで経理」植田会計事務所です。

スマホ経理を勧めている植田会計事務所ですが、今回は「半分だけ」スマホ経理を行おうというお話です。

スマホ経理で全ての作業ができるわけではない

植田会計事務所の経理をスマホで行うようになって、そろそろ半年になります。
「やよいの青色申告オンライン」にスマホからの入力はもちろん、スマホから売掛の入金処理や試算表のチェックなど、弥生が本来予定していない使い方もいろいろと模索してきました。
それは、パソコンで行う作業がスマホからもできると、経理の効率が格段に上がるからです。

しかし、スマホ経理は便利ですが、まだまだパソコンで行った方が良い作業が多くあります。
売掛の入金処理や試算表のチェックなどは、パソコンを使用する場合は何の問題もなく行える作業です。

また、スマホの弱点は何と言っても「画面の小ささ」です。
「やよいの青色申告オンライン」もスマホに対応していないため、無理にログインすると表示が途切れるなどの不具合が生じます。
スマホは「コンパクトで持ち運びに便利」というメリットと引き換えに、「一度に多くの情報を表示できない」というデメリットがあるのですね。

割り切って「半分だけ」スマホ経理してみる

ならば、長所である経費の支払いや売上の計上はスマホで行い、短所である売掛の入金や試算表のチェックはパソコンで行うと割り切って使われてはいかがでしょうか?

何も全てスマホにこだわることはありません。
経理が一番楽になるおいしい部分だけ選択すれば良いのです。

経理は「貯めると」しんどいので、手間がかかって内容を思い出すのに時間を要する日々の経費などはスマホで処理すれば良いでしょう。

それ以外の取引は、思い切ってパソコンで処理してしまいましょう。
売掛入金時の精算仕訳や給与の支払い時の仕訳、残高試算表のチェックと細かい修正が主な作業になるでしょう。
つまり、「半分だけ」スマホ経理というわけです。
日々の経費を計上しないだけでもかなり時間が短縮できますよ。

植田会計事務所は研究も兼ねているのでスマホからの経理にこだわっていますが、皆さんは自社に合った経理スタイルを探してみてください。
もし、スマホ経理のやり方が分からなかったり、現在の経理にスマホを活用されたい方はぜひ植田会計事務所へご相談ください。
スマホでできること、できないことをお伝えできればと思います。

個人事業主が申告前に注意すべきポイント~売上の計上もれ~

売上の計上もれにご注意!

こんにちは!外注せずにご自身で経理を行いたい方をサポートする宝塚の会計事務所、「じぶんで経理」植田会計事務所です。

早いもので今年もあと1カ月を残すのみとなりました。
個人事業主の皆様と同様、植田会計事務所も今年の業務のラストスパートをかけているところです。

さて、植田会計事務所では例年この時期になると個人事業主の皆様に「今年の利益動向」をお聞きしています。
毎月顧問料をいただいている方も、年1回申告料のみの方も同様です。
毎月顧問料をいただいている方は定期的に売上や仕入・人件費をご報告いただいているのでかなり正確な利益と税額を見通すことができます。
反対に年1回申告料のみの方は口頭で数字をお聞きして「ざっくり」とした利益を予想することになります。

同じ利益の予想ですが、年1回の方の場合、毎年ご説明に時間を費やすポイントが二つあります。
ひとつは「売上の計上もれ」で、もうひとつは「在庫による利益の増加」です。
今回は「売上の計上もれ」について考えてみましょう。

「売上の計上もれ」とは何か?

例えば11/1に10万円の仕事を行ったとします。
この仕事の代金を12/31に現金で受け取りました(または口座に振り込まれました、でも構いません)。
この場合、この年の売上は10万円になります。
ここまではよろしいでしょうか?

では、11/1に行った10万円の仕事の代金を、翌年の3/16に受け取ったとしたらどうでしょうか?
確定申告の期限である翌年3/15の時点ではまだ入金がありません。
この10万円はいつの売上に計上すれば良いのでしょうか?

答えは「仕事を完了した日の属する年の売上に計上する」です。

商品が存在する卸小売業や製造業では「納品した日」、サービス業では「サービスを提供した日」が売上を計上すべき日となります。
代金を受け取ったかどうかは関係ありません。
関係ないのですが、ついつい「入金した日=売上の日」とされてしまう方が多いため、年1回しか関与しない方に対しては「年内に納品またはサービス提供して、代金の受け取りが翌年になるもの」がないか細かくヒアリングすることになるのです。
売上の計上がもれると当然その年の税金が少なくなります。
これを税務調査で指摘されると不要なペナルティを支払うことになるのでご注意ください。

売上の計上もれを無くすにはどうすれば良いのか?

売上の計上もれを無くす方法ですが、最初から「発生主義」による経理を行なっていれば生じないはずです。
しかし、個人事業主で発生主義による経理を行なっている方はそれほどいないのではないでしょうか?
それよりも入金に合わせて売上を計上する「現金主義」で経理を行なっている方がほとんどのはずです。

現金主義で経理を行なっている場合には、先ほども述べたとおり「年内に納品またはサービス提供して、代金の受け取りが翌年になるもの」をチェックするしか売上の計上もれを無くす術はありません。

チェックの方法ですが、まずは申告する年に発行した請求書をチェックし、発行した請求書の売上が全て計上されているかチェックします。

計上もれがなければ次は通帳をチェックし、翌年1〜2月の入金に注目します。
1〜2月の入金は前年中に行った仕事に対応することが多いので、これらの入金がどの年の売上なのか確認してください。

本業の売上以外にも、設置した自販機からの収入や事業所に設置した太陽光発電の収入もチェックし、発生した年の売上に計上しましょう。

以上、チェックの方法を述べてきましたが、やはり時間が経つと記憶は曖昧になり、計上もれが発生しやすくなります。
普段からスマホ経理などを利用して、売上の都度会計ソフトに計上していく方法も選択してみてはいかがでしょうか?

 

領収書の精算方法について悩んでませんか?

こんにちは!外注せずにご自身で経理を行いたい方をサポートする宝塚の会計事務所、「じぶんで経理」植田会計事務所です。

今回は領収書の精算方法についてです。

事業を行う上で必ず発生するものが「費用の支払い」です。
個人事業主で貸借対照表を作成していない方なら支払った費用の金額を集計するだけで良いのでしょうが、これが法人の費用となると話が違います。
なぜなら、法人は必ず費用を支払う「出処」を明らかにしなければならず、貸借対照表の項目が変動するからです。

例えば、文房具を100,000円で購入した場合。
貸借対照表を作成しない個人事業主なら「消耗品費 1000,000円」とするだけです。
一方、法人は「消耗品費 100,000円」までは同じですが、その文房具を「現金で購入したのか」「銀行振込みで購入したのか」「社長や従業員が立て替え払いして購入したのか」またはそれ以外の方法で購入したのかまで決まらないと費用の計上ができません。
そして、現金で購入したなら貸借対照表の現金残高が100,000円減少し、銀行振込みで購入したなら預金残高が減少し、社長や従業員が立て替え払いして購入したなら借入金が増加するのです。

精算を怠ると貸借対照表が不自然な形になる

領収書の精算を行っていない場合、どんな影響があるのでしょうか?
費用の支払いを続けていると当然手持ちの現金がなくなってくるので預金口座から現金を引き出して補充します。
すると、引き出すごとに現金残高が増えていき「現金残高が異常に多い」貸借対照表が出来上がります。

または、社長や従業員が立て替えて払った費用を「現金で支払った」ものとして処理し続けた場合、費用を計上するごとに現金残高が減っていき「現金残高がマイナス」の貸借対照表が出来上がります。

意外に思われるかもしれませんが、経理経験者でない方が作成した貸借対照表の現金残高が「異常に多い」または「マイナスとなっている」ものは比較的よく見られるものです。

領収書の精算方法は一定のルールを決めるべき

それではどのような方法で領収書を精算すればよいのでしょうか?
ポイントは領収書を精算する「一定のルール」を決めることです。

例えばこのようなルールはいかがでしょうか?
①毎月1日から末日までの日付の領収書を一つのクリアファイルに集めておきます。
②翌月にクリアファイル内の領収書金額を集計します。
③集計した金額と同額を預金口座から引き出して精算します。

なお、精算は1カ月に1回とは限らず、2〜3回に増やしても良いでしょう。

また、上記②の集計のタイミングで旅費交通費や交際費といった科目ごとに分けることで、一カ月分の領収書を一気に費用処理することも可能です。

領収書の精算は経理を行う上で避けては通れない問題です。
自社に合った精算方法はどのようなものなのか。
みなさまも一度チェックしてみてください。

ついにスマホでの確定申告が可能になります

ついにスマホでの確定申告が可能になります

こんにちは!外注せずにご自身で経理を行いたい方をサポートする宝塚の会計事務所、「じぶんで経理」植田会計事務所です。

少し前の記事ですが、日本経済新聞の記事によると、国税庁は2019年1月からスマホを使って確定申告ができるよう、現在の確定申告システムの刷新を行うこととなりました。

これまでも申告書を作成する段階まではできましたが、データを送信することはできず、入力内容を紙に印刷して提出する必要がありました。
(ちなみに青色申告決算書や譲渡の明細は入力できず、別途紙媒体で作成する必要があります)
しかし、今回の刷新はこのような手間をかけず、スマホに入力した内容をそのまま送信して申告できるようにするものです。

システム刷新の背景に「作業の効率化」

この刷新の背景には「副業の広がりで確定申告が必要な人が増えているため〜」とありますが、本当の理由は違うはずです。
私は「税務署の作業効率を上げるため、e-TAX(電子申告)をより普及させるべくスマホにも対応する」が本当の理由と考えます。
実際に税務署の方も「税務署はギリギリの人員で運営されているので、さらなる作業効率の改善のためe-TAXの普及をお願いします」と事あるごとに訴えているのが現状です。

税務署の人員がギリギリかどうかは不明ですが、国の方針として税務申告の電子化を推進していることは確実です。
最初はまるで使い物にならなかったe-TAXも、今では紙で申告することが考えられないほど便利なインフラとなりました。
きっとスマホでの申告も、最初は不具合のオンパレードで「あんなものは使えない」と選択肢から外してしまう方も出てくるでしょう。
しかし、惑わされてはいけません。
必ず!確定申告=スマホがあたりまえ、という世の中になります!

今のうちからスマホ経理に慣れておくこと!

なので、私は今からスマホでの経理に慣れておくことをお勧めします。
スマホからの申告ができるのに、経理はデスクトップPCで行うというのは効率的ではありませんよね?
今は紙で作成せざるを得ない青色申告決算書なども、流れからいくとスマホでの作成もできるようになるはずです。
(おそらく技術的には決算書なども作成できるはずですが、まだ国税庁側にそれらのデータを受け入れるだけのキャパがないのでしょう)

何度もお話していることですが、小規模企業の経理原則は「手間」と「お金」をかけないことです。
スマホ経理とスマホ申告を身に付けて、手間をかけない経理を目指してください。

個人事業主は12月までに10カ月分の経理を終わらせておくべき!

こんにちは!外注せずにご自身で経理を行いたい方をサポートする宝塚の会計事務所、「じぶんで経理」植田会計事務所です。

前回は「年明け経理はリスクがいっぱい!」というタイトルで、消費税にかかわるリスクについてお話ししました。
消費税のリスクは非常に大きく、届出一つで税額が大きく変わってきます。
あってはならないことですが、我々税理士がやってしまうミスの多くがこの消費税関係です。

以前ある会社が消費税の課税事業者に該当するかどうか、他の税理士事務所にアドバイス差し上げたことがあります。
非常にややこしい判定で、一見すると免税事業者と判定してしまいそうでしたが、結果は課税事業者に該当しました。
ところが申告書提出後、管轄の税務署から「免税事業者に該当する」との連絡が来ます。
口頭で説明しても「課税事業者に該当するのでもう一度確認してください」との一点張り・・・。
免税事業者にならないことは分かっていたので、税務署に対し税務署が作成したパンフレットを使用して判定の経緯を説明すると、最終的には税務署にも納得していただきました。

この出来事からも分かるように、消費税の制度は税務署ですら判定を間違えるほど複雑になっています。
それほど複雑な制度を一般の方が理解して判断を続けていくことは無理があるように私は思うのです。

話が脱線しましたが、年明け経理のリスクについて、話を続けます。

税金は事業から発生するものだけではない

年明けに経理を済ませて税金が確定。
ホッとして事業主の方とお話ししていると「そういえば車を買い換えたんだけど、関係なかったよね?」と一言。
・・・私用の車なら関係ないのですが、大部分を事業の用に供している車だったので、税金の計算はやり直しになります。
買い換えで下取りに出した車は中古でも価値の下がりにくい車種なので譲渡所得が発生し、かつ、消費税もかかってきます。
そうなると、納税の資金繰りを計算し直さなければなりません。

また、生命保険の満期保険金があったり、所有する土地に広告看板が設置されて不動産収入があったりしても所得税は変わってきます。

さらに、ご本人にそのつもりはなくても名義をお子様にしたため、贈与税が発生してしまうケースも見受けられます。

個人事業主は12月までに10カ月分の経理を終わらせておくべき

ご紹介したケースは、いずれも「気付かなくても仕方ない」ケースと思います。
税金の仕組みは複雑で、個人事業主の方が日常の業務をいちいち税金と結び付けているとは考えられないからです。
だからといって、税金が免除されるわけではありませんが・・・。

それでは、個人事業主の方はどのようにすれば様々な税金リスクから身を守ることが出来るのでしょうか?

私は「とにかく10カ月分の数値を集計しておく」ことをお勧めします。

これは法人にも言えることですが、ほとんどの税金には「期間」が決められています。
所得税や贈与税なら毎年1/1〜12/31が所得や贈与額を計算する期間ですし、法人なら通常は期首から1年を経過する日(決算日)が利益を計算する期間です。
この期間を超えてしまうと新たな計算がスタートしてしまうので、何か対策を取ろうとすると、その期間内に行動する必要があります。

さて、対策を取るには今年度の利益がいくらくらいなのか把握する必要があります。
固定費が費用のほとんどを占めるようでしたら売上でほぼ利益は決まります。
しかし、変動費が多くを占める場合は実際に集計してみないと利益を把握することは困難です。

売上や費用を集計していない状態で経営者の方に「今期の利益はいかがですか?」と尋ねても、回答は経営者の性格に大きく左右されます。
楽観的な方は大体「前期と同等以上」、保守的な方は「前期より少なめ」と回答されます。

そこで、10カ月分の数値を集計しておくことが重要になります。
売上は集計しやすいと思いますので全てを、逆に費用は細かいところまでは求めません。
例えば、現金払いの細かい費用は後回しにして、振込や口座振替などの分かりやすいものを集計してしまいます。

そうして10カ月分の利益が出てきたら、残り2カ月の売上や費用を差し引きして決算予想を出すのです。
個人事業主の12月頃ならば、11月の売上と費用は出そろっているでしょうし、12月の売上と費用も大体検討がつくはずです。
法人も同様のやり方です。

これが出来るかどうかで変わるのは税額だけではありません。
資金繰りも変わってきます。
資金力の弱い小規模事業者にとって怖いのはスポットの支払いです。
中でも税金はスポットの支払いの中でも金額が大きく、影響の強いものとなります。
あらかじめ2〜3カ月後に税金の支払いがあることが分かっていれば対策の取り様もありますが、申告直前に分かっても打つ手はほとんどありません・・・。

今まで年明けに経理を行なっていた個人事業主の方や決算後に経理を行なっていた経営者の方は、一度「10カ月経理」をお試しください。
きっと、決算前にやるべきことが見つかるはずです。

年明け経理はリスクがいっぱい!

早いもので、今年も残すところあと2カ月となりました。
つい先日まで「暑い!暑い!」と言っていたような気がしますが、最近は朝晩が寒くてもう一枚上着が欲しくなりますね・・・。

さて、われわれ会計事務所の業界ですが、だいたい11月頃から繁忙期に入ります。
繁忙期の内容は次のようになっています。

11月 お客様に対し年末調整と確定申告の資料提供のお願い
12月 年末調整及び個人事業主のお客様の決算予想
1月 法定調書や償却資産の申告、還付申告の場合は確定申告の開始
2月 還付以外の確定申告や贈与税の申告開始
3月 確定申告終了

このように、3月15日の確定申告最終日まで会計業界はノンストップでバタバタと過ごします。
(さすがにお正月だけは休みますが・・・)
会計事務所にとって確定申告はその年のビッグイベントなので、最終日を迎えると「今年もやり遂げたぞ〜」という達成感に満たされるものです。

・・・満たされるのですが、それと同時にいつも「危ないな〜」と私が感じていることがあります。

個人事業主の方は経理をいつ頃からスタートしていますか?

毎月経理をコンスタントに行っている方は何の問題もありません。
業種にもよりますが3カ月〜半年に一度という方もおそらく大丈夫でしょう。
しかし、実際には大多数の方が「年が明けてから」経理をスタートしているのではないでしょうか?
この、年が明けてから経理をスタートするという方法はかなりリスクがあります。
それは「気付いた時には既に手遅れ」という会計業界の人間にとっては絶対に避けたいリスクです。

リスク1     ギリギリ消費税の課税事業者になってしまう!

今までは売上が900万円台で推移していたが、去年はたまたま売上が1,000万円をギリギリ超えてしまった・・・、というケース。
同じ1,000万円の売上でも、消費税の課税事業者なら1,000万円×8/108=74万円が発生します。
ここから支払った消費税を控除するのですが、半分控除できたとしても37万円納付することになります。
ギリギリ1,000万円を超えたために多額の納付を行うくらいなら、少し仕事を休むか値引きすべきでした。
しかし年が明けてから気付いても、既に手遅れです。

また、既に課税事業者となっている場合でも消費税は年々取り扱いが複雑化しているので、「年が明けてから〜」なんてのんびり構えていると思わぬ事態になる可能性があります。

話が長くなってきたので、続きはまた次回にお話しします。

なぜクラウド会計が必要なのか?

植田会計事務所が推進するスマホ経理ですが、その前提はクラウド会計を利用することとなっています。
植田会計事務所は弥生をお勧めしているので、具体的には「弥生会計オンライン」や「やよいの青色申告オンライン」、それから「やよいの給与明細オンライン」ということになります。

こういったクラウド会計の利用をなぜ推進するのか?
単に時流に乗っているわけではありません。
クラウド会計の利用は情報消失のリスクを軽減することになるからです。

情報消失という致命的なリスク

皆さんは会社で使用するPCが動かなくなった、または調子が悪くなったのでバックアップからデータを復元した、という経験はありませんか?

私の事務所では年に1〜2回はPCの調子が悪くなります。
それも、年末調整や確定申告といったPCをフル使用する時期に限って調子が悪くなることが多いです。
(フル使用するから調子が悪くなるのかもしれませんが・・・)

そんな場合でも、PC本体は最悪買い替えれば済む話です。
しかし会計データや申告データといった情報は、何としてでも確保する必要があります。
紙媒体で保管していない限り替えがききませんし、紙媒体で保管していたとしてもその復元にはかなりの時間と労力を費やすことになります。

小規模企業はクラウドをデータ保管方法のひとつとして利用すべき

そこでクラウド会計の出番です。
クラウド上にデータを残しておけば、クラウドのサービスを提供している企業がデータを保管してくれます。
データの保管も、素人があれこれ対策するより専門の業者に任せてしまった方が確実で労力もかかりません。

なお、会計に限らず、クラウドを利用すると「情報流出のリスクがあるのでは?」という意見もよく聞かれます。
(これを理由に、国税の電子申告を未だに行わない税理士事務所もありますね・・・)
確かにそのリスクはあるかもしれませんが、それよりも情報消失の方がはるかに発生する確率が高く、ダメージも大きいのではないでしょうか?

こうしたクラウド会計のメリット・デメリットを総合的に勘案すると、クラウド会計は小規模企業の情報消失リスクを防ぐ効果的な方法のひとつであると言えます。

ただし、クラウドはあくまで方法の「ひとつ」です。
リスクを軽減する原則は「複数媒体での保管」であることを忘れてはいけません。
クラウドでのデータ保管に加え、「紙媒体での保管」「PC内保管」も行うようにしましょう。
こうした少しずつの手間が、情報消失を防ぐ保険になるのです。

スマホから弥生会計オンラインにログインするとどうなるのか?

スマホからクラウド会計ソフトにログインするとどうなるのか?

スマホで経理を行なっている方、その中でも「弥生会計オンライン」や「やよいの青色申告オンライン」を使用されている方なら当然湧いてくる疑問です。

私のブログでも度々「弥生のスマホアプリではできない処理があるので、必ずオンライン版にログインする必要がある」と述べてきました。

しかし、オンライン版はwebサイト上に存在します。
そして、スマホはPCと同様のwebサイトにアクセスすることができます。
ならば、ひょっとしてスマホからログインするとオンライン版をそのまま使えるのでは・・・?
そう考え、実際にスマホからログインしてみました。

ログインすることは可能です。
画面左側に表示された仕訳入力やレポートを選択することもできます。
が、メニュー以外の表示がうまくいきません。
やはり画面の大きさが違いすぎるため、表示できない部分がかなり出てきます。
なんとか動かして取引を登録することもできましたが、実用には程遠い状態です。

弥生のサポートにも質問してみましたが、オンライン版はPCでの使用を前提としており、モバイルには対応していないとのことです。

残念ですね〜。
表示が小さくてもPCと同じ表示さえできれば、経理を全てスマホで完結することができるのですが、できないものは仕方ありません。
いつかはスマホで経理を完結できることを願いつつ(弥生に要望も出しておきました)、植田会計事務所は可能な限り経理をスマホで進められる方法を模索し続けます。